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揚げ浸して一晩 白身美味 - 読売新聞

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 日中のうだるような暑さが和らぎ、釣りに適したシーズンとなった。狙いは定めず、のんびり投げ釣りを楽しもうと、高松市庵治町のとある浜に向かった。

 途中、釣具店で餌の青イソメ(ゴカイ)を500円分購入。これで4、5時間は楽しめるのだから、お得な娯楽だ。

 昼過ぎ、初めて釣りに来た浜で、瀬戸内の多島美を眼前に、投げ釣り用の2本針仕掛けをつなぎ、力強くさおを振った。期待するターゲットは、夫婦とも好物のキス(シロギス)だが――。

 置きざおで当たりを待つ。海底には藻やシモリ(隠れた岩)が点在するため、リールを少しずつ巻きながら当たりを取る「引き釣り」では針やオモリが引っかかるためだ。時折さおをあおって餌をアピールする。

 しばらくすると、さお先がククッとお辞儀をするように曲がった。さおを立ててリールを巻く。「キスの引きじゃない」。揚がってきたのは青色のキュウセン。25センチほどか。

 キュウセンはベラ科の一種。関西では「ギザミ」、県内では「ベロコ」と呼ばれ、地魚を扱うスーパーでも時折売られる。雌雄同体で、約20センチまでの小型のうちは赤色の雌(赤ベラ)、大きくなると青色に変わり雄になる。見た目はグロテスクだが、塩焼きや煮付けが美味で、専門に狙う人もいる。

 結局、夕方までキスの当たりはなく、キュウセンを雄雌2匹ずつ持ち帰った。

          ◇

 塩焼きや煮付けは、四国キッチン番外編のガシラやサヨリで紹介済み。今回は一手間加え、南蛮漬けにしたい。

 〈1〉ウロコを取り、頭を落としてはらわたを取り除く。魚体にぬめりがあり、塩でもむと下処理しやすい。火が通り味も染みやすくなるよう、身の両面に3、4か所、包丁で切れ込みを入れる。

 〈2〉キッチンペーパーなどで水気を取り、表面に軽く塩コショウを振り、片栗粉をまんべんなく軽くたたくようにしてなじませる。

 〈3〉タレ作り。しょうゆ、酒、酢をほぼ同量、砂糖少々、みりん、水で味を調える。ここまでは定番。さらにユズ酢を加え、ショウガとニンニクを少量すり下ろし、刻んだ大葉とネギも入れる。付け合わせのタマネギ、ニンジン、ピーマンを細切りにして漬け込む。

 〈4〉片身が浸るほどの油を鍋で約200度に熱して揚げる。身が非常に軟らかく、切れ込み部分が開いてくるため、4、5分ほどでひっくり返し、両面をじっくり揚げる。

 〈5〉揚がったら、そのままタレに浸す。キッチンペーパーなどで油をしっかり切る必要はない。

 〈6〉冷蔵庫で冷ます。身や細切り野菜を混ぜ合わせ、全体になじませる。

          ◇

 一晩寝かせて味わうと、白身にタレがしっかり染み込んでいた。野菜もピクルスより味わい深い。南蛮漬けは、手軽なサビキ釣りで狙えるアジやサバでもオススメだ。

 妻と2人でペロリと平らげた。おいしい。おいしいのだけど、食後の感想は夫婦一緒だった。「キスの天ぷらが食べたい」(田岡寛久)

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September 26, 2021 at 03:00AM
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