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朝食の定番揚げパンに挑戦 家でつくるアジア旅の味・油条編 - 朝日新聞デジタル

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世界各地を旅してきた旅行作家・下川裕治さんが、アジアの旅先で味わったものを自宅で再現するシリーズが始まります。下川さん、写真家の阿部稔哉さん、中田浩資さんの3人それぞれが試行錯誤。まずは各地の「油条」を振り返りながら、下川さんと中田さんが再現に挑戦します。

■本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:Scene5、6、7は下川裕治撮影、ほかは中田浩資撮影)

家でつくるアジア旅の味・油条編

忘れられない味がある。飽きるほど乗る列車やバスの旅で刷り込まれてしまった味がある。なかなか目的地に着かないバスのなかで空腹を癒やした味がある。その味を口にしたとき、電流が走るように旅がよみがえってくる。長旅に疲れた乗客のほうけた顔と一緒に……。

そんな味を家で再現できないだろうか。コロナ禍で海外に出ることが難しい。そんないま、旅の味をつくろうと試みた。つくることが無理そうなものは、ネットを頼りにとり寄せてみた。はたして家の台所で旅の味は再現できたのか。

第1回は油条。中国や台湾の定番朝食の揚げパンである。タイ、ミャンマー、ラオスなどの東南アジアでも朝に食べることが多い。

長編動画

油条をつくってみた。そのつくり方を動画で。どうもさまざまなつくり方があるらしい。めざすのは表面はカリッと揚がり、なかは空洞があって軟らかいあの歯ざわり……。しかし意外と難しい。僕らも失敗を繰り返しました。ラストには試食風景も。

アジアに広がる油条の世界、そして再現の様子 「旅のフォト物語」

Scene01
油条

油条の本場、中国。ヨウティアオという。これを豆乳や稀飯(シーファン)という、米や粟(あわ)でつくったおかゆに浸して食べる。中国の鉄板朝食は、ほッとするほど胃に優しい。物足りない派は、包子(パオズ)という肉まんや饅頭(マントウ)という蒸しパンを追加。それをぐっと我慢する中国人シニア。ダイエット中?(新疆ウイグル自治区)

Scene02
店

中国で油条があるのはこういう店。ここは北京の胡同(フートン)と呼ばれる路地。僕らが泊まる安めの宿の近くにはよくある。昔はもうもうと湯気が立ちのぼっていた。そこで暖をとって店内へ。北京の朝を実感していました。しかし最近は、なぜか湯気、少なめ。ちょっと不満。

Scene03
油条

中国もチェーンのファストフード店は多い。僕らがよく利用するのは、夜行列車で着いた駅周辺にある朝食向けファストフード。そこにも油条セットが。ここは台湾から進出したチェーン「永和豆漿」。豆漿は豆乳のこと。「安い、早い、味普通」は世界のファストフード共通?(内モンゴル自治区)

Scene04
朝食

中国の地方都市の安めのホテルでも、朝食バイキングが用意されることが多い。でも並ぶ料理は中国式。冷菜、炒め物、チャーハン、ゆで卵……。中国ですからちゃんと油条も。これは中田浩資カメラマンが選んだ料理。これに豆乳。しっかり中国です。ただしコーヒーは……まずありません。(新疆ウイグル自治区)

Scene05
店

タイでは油条をバートンコーという。中国のそれに比べるとずっと小型。朝に豆乳と一緒に食べることが多い。ここはバンコク。朝食用屋台などが集まる朝市。この店は僕の行きつけで、1個2バーツ、約7円のバートンコーを3個。近くで豆乳とコーヒーも買う。僕の朝散歩というか、朝の儀式です。

Scene06
油条

ミャンマー北西部のカレーミョ。ぼろぼろの列車に乗ってたどり着いた。翌朝、近くの茶屋で朝食。目の前に油条。「でかッ」。これをミルクティーと食べる。テーブルの上にはパンや菓子も置かれ、食べた分を払うシステム。油条だけで満腹になるミャンマーの朝でした。中国の影響を受けているのか、店の人はヨウティアオと呼んでいた。

Scene07
店

ラオスのルアンパバーンの朝も油条。早朝、僧侶への托鉢(たくはつ)風景を見て宿に戻ろうとすると、ありました。そこで朝食。タイより大きく、中国よりは小ぶりという、折衷サイズが、両国に接するラオスらしい? タイ語でバートンコーというとわかってくれました。でも、一緒に出してくれたのは、練乳たっぷりのラオスコーヒーでしたが。

Scene08
焼餅油条

台湾は油条の聖域。だから応用が半端ない。これは焼餅油条(シャオビン・ヨウティアオ)。パリッと焼いたパンで油条を挟む。つまりパンをパンで挟むというパンサンド。東京の人は、関西人が好むたこ焼き定食を揶揄(やゆ)する。糖質をおかずに糖質を食べるか……と。しかしこれはその比ではない。これが許されるのか……で食べて脱帽。いまや好物朝食。

Scene09
鹹豆漿

油条に豆乳というゴールデンコンビも台湾人の手にかかると……。これは鹹豆漿(シェンドウジャン)。豆乳に酢を合わせ、おぼろ豆腐のようにして、干しエビ、ザーサイ、香菜などを薬味にし、油条を浸すという朝食。油条が軟らかくなってくると食べ頃。僕も一時はまりました。まずは食べてみてください。その味、目からうろこです。

Scene10
飯糰

台湾では油条がおにぎりにも入り込む。飯糰(ファントァン)。おにぎりといってももち米。そこに肉鬆(ロウソン)という豚肉のデンブ、ザーサイ、干し大根などたっぷりの具。そして油条。おにぎりの具にパン? こんなことをしていいのか……と思うが、頰張って目の色が変わる。油条のサクサク感がたまらない。ほかの具の味もしみてます。

<再現油条のつくり方はここから>
Scene11
粉

中国のそれより小ぶりサイズ、20個ほどを家の台所でつくってみることに。薄力粉50グラム、強力粉50グラム、ベーキングパウダー1.5グラムをふるいにかけてよく混ぜる。ネットのレシピには薄力粉のみでつくるものもあった。試してみたが、やや目が詰まった感じになった。薄力粉と強力粉半々がいい気がする。

Scene12
重曹

僕はほかのレシピに倣って、イースト菌を加え、練り込んだ生地をオーブンで40分ほど加熱した。倍ほどに膨らんだ生地を再度こねて揚げた。しかしうまく空洞ができない。なかが詰まってしまう。なにがいけない? ところが中田カメラマンはイースト菌を入れずに写真のように重曹を加えた。これがポイントなのだろうか。

Scene13
生地

ぬるま湯70ccに塩1gと重曹1gを溶かし、粉を入れて混ぜる。生地がまとまってから、ひたすらこねる。こね続ける。目安は7分。油条屋さんは前夜、この作業を延々とやっているわけだ。なにしろ彼らがこねる量は僕らの10倍? いや数十倍? 続いて生地を麺棒でのばし、三つ折りにして、ラップでぴっちりと包み、容器に入れてひと晩。これをやっていたレシピは多かった。油条づくりは2日がかりです。

Scene14
成形

成形はそれぞれの旅の記憶を頼りに。紹介しているのは小ぶり中国スタイル。菜箸で中央部分を押さえると空洞ができやすい。揚げる前にねじりを入れる。タイ風につくりたいなら、やや薄めにして、2枚を重ね、それをそのまま油に入れればいい。ここまでくれば楽しい油条づくり? いや、難関が待っています。

Scene15
油条

できました。揚げるときの油の温度はかなり重要。190度から200度が目安。それより低いと、さくっとした感じにならない。パンの耳を揚げたようになってしまう。砂糖をまぶせばラスク? 揚げる時間はそれほど長くなくても大丈夫。表面がきつね色になったところで油からあげる。その感覚は動画を見てください。

※再現してみた日:2月15日~16日

【次号予告】次回は自宅で再現する香港のマカロニスープです。

BOOK

朝食の定番揚げパンに挑戦 家でつくるアジア旅の味・油条編

2019年に連載された台湾の秘境温泉の旅が本になりました。

台湾の秘湯迷走旅(双葉文庫)
温泉大国の台湾。日本人観光客にも人気が高い有名温泉のほか、地元の人でにぎわうローカル温泉、河原の野渓温泉、冷泉など種類も豊か。さらに超のつくような秘湯が谷底や山奥に隠れるようにある。著者は、水先案内人である台湾在住の温泉通と、日本から同行したカメラマンとともに、車で超秘湯をめざすことに。ところがそれは想像以上に過酷な温泉旅だった……。台湾の秘湯を巡る男三人の迷走旅、果たしてどうなるのか。体験紀行とともに、温泉案内「台湾百迷湯」収録。

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日文庫)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)、「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ」(朝日文庫)など。最新刊は、「台湾の秘湯迷走旅」(双葉文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

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March 24, 2021 at 09:41AM
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